| まるで水墨で描いた険しい冬の山々のような雰囲気を持つ向付です。 静まり返った深山の大笹に音もなく大粒のぼたん雪が降り積もる。 雪に煙ったグレーの風景の中、大笹のシルエットは濃く黒々と、静かに雪を降り積もらせています。それでも山々は春になると柔らかに芽吹き、やさしい命の営みを黙々と続けるのです。そんな厳しさとやさしさを併せ持ったような向付けからこそ、手にしたときに土のぬくもりをじわりと感じるのかもしれません。 個性的な向付です。縁に向けて広がる形で透かし細工も入っていますが、繊細さよりも自然の荒々しさと土の素朴な風合いを感じられるのではないでしょうか。手に持ったときのどっしりした感じと重厚感が底につけられた足で幾分やわらげられています。大きく入った透かしも器の重たい印象をうまく緩和していて、軽やかさを出すのに一役買っています。コクのある、パンチの効いたお料理も難なく受け止めてくれる大男のような風情。無骨ながらなんとなく愛嬌がある、魅力的な人物のような器です。 |








